【登場人物】

(私)スポーツナロ代表(66歳)
16歳(高一)テニスショップでアルバイトを始め、大学卒業後22歳同店で就職、27歳、日本初軟式テニス専門店「スポーツナロ」設立、以来、販売のみならず、メーカーとのラケット企画、工場訪問、試打、ストリンガー、選手として(まだ試合に出ています)指導者としておよそ半世紀それぞれの立場からソフトテニスラケットを見続けているおじさん


(お客さま)
会社員(48歳)

中学でなんとなく(笑)軟式テニス部に入部、高校、大学までプレー。就職を機に競技から離れ、その後は、仕事や子育てに追われているうちに、すっかり縁遠くなっていたが、高校のテニス部のOB会で、一足先にソフトテニスを再開した同期の若々しい姿を見て、「よし、僕もやろう!」と決意。実家の押し入れにあったラケットを引っ張り出すが、ガットは切れて、グリップはボロボロ、そこで購入を決意して「軟式ラケット買うならナロさん」と、ネットで調べてご来店


前回のエピソードはこちら

(私)
ありがとうございます。
では、次はガットですね・・・
※ガットコーナーに案内


(お客さま)
わー!こんなにあるんですね。


(私) 
はい、今発売されているソフトテニスストリングスはすべてあります。


(お客さま)
私は高校まで、鯨筋(げいきん)ガットを使っていました。(笑)


(私)
今は、ありません・・


(お客さま)
これは、ラケット以上に厄介ですね。
さっぱりわかりません。


(私)
ですよね、、、
では、ガットについてご説明します。
また、長くなるかもしれませんがよろしいでしょうか?
お時間は大丈夫ですか。


(お客さま)
はい大丈夫です
覚悟します(笑)
よろしくお願いします・・・
勉強させてください 

ストリングス?ガット?


(私)
お客様は、ストリングってなにかご存知ですよね


(お客さま)
はい、ガットのことですよね。
でも、私の学生時代は、ストリングとは言わず、ガットでした。


(私)
そうですよね。当時は鯨筋とナイロン数種類だけ。
ナイロンのガットが出始めは、飛ばない、硬い。長所はただ「切れない」こと。
出始めは、釣り糸のメーカーさんが販売していたと思います。
(今もゴーセンさんは釣り糸も作っています)
ナイロンガットはトップ選手には不評でした。特に当時主流だったウッド(木製)ラケットとの相性は最悪でした。
それが、ラケットの素材が、カーボンになって、逆に鯨筋ガットだと飛びすぎるので次第にナイロンガットが主流になりました。それと鯨筋ガットの耐久性、雨に濡れるとすぐに切れてしまい。今では考えられないけど、当時手張りだったから、切れたところをつないで使っていました。


(お客さま)
そう!そう!打球面の端っこにつなぎ目があって、ガットの端っこをたばこで熱して丸くしていました・・・(笑)


(私)
ストリングとガットの違いは、ガットは天然素材(硬式テニスは、羊や牛の腸、ソフトテニスは鯨の脳の繊維)のものでストリングは人口的に作られたもの。厳密には異なるものですが、現在はほぼ同じ意味で使われています。
ここでは、ガットと言わせていただきますね。


(お客さま)
ということは、ここにあるのは、厳密にはガットではなくて、ストリングスなんですね。

 

(私) 

はい。そうです
ガットの性能を決める要素は

1:素材
2:構造
3:太さ(ゲージ)
4:コーティング(表面加工)
5:テンション(硬さ)

1:素材は大きく分けてナイロンとポリエステルがあります。
同じ構造の場合、ナイロンと比較してポリエステルのほうが硬いです。

2:構造はモノフィラメントとマルチフィラメントがあり、モノフィラメントは太い一本芯の周りに細い糸を巻き付けたもので

一般的なモノフィラメント
ナイロンモノフィラメントは、側糸にさまざまな加工を施すことで、性能を変化させることができます。

●特徴 耐久性 反発 種類が豊富

ヨネックス:サイバーナチュラルシャープ
ゴーセン:ガムブースト・ガムゾーン
ミズノ:モノファイバースピード
ほか多数



ポリエステルは加工しにくいので、素材そのままです。
針金のように硬くて、伸縮性が少ない

●特徴 打球音がいい 反発 硬い
トップ選手多数使用しています

ゴーセン:ソニックブロー・ライジングストーム
ヨネックス:ポリアクションプロ・ポリアクション
ほか

 

(お客様) 
私の頃は、ポリエステルなどはありませんでしたよね


(私)
はい、硬式テニスで25年前ほどから出始めましたがソフトテニスでは10年ほどからです。
当初は、あまりにも硬いのでごく一部の後衛ハードヒッターだけが使っていましたが
「音がいい」「フラットで当てるとボールが食いつく」
ということと、バリエーションも増えて、最近、急激に張る人が増えています。
でも、あくまでも、パワーがあって、スイングスピードが早くボールを潰して打つハードヒッターでないと、メリットが出ないです。


(お客さま)
私には向いていないですね。


(私)
マルチフィラメントは

このように、細いナイロン糸を束ねて、一本にしたもので昔の鯨筋と同じ構造です。
インパクトで糸の繊維が伸縮させてボールを掴んで飛ばします

●特徴 軟らかい 飛距離が出る ホールド感

ヨネックス:サイバーナチュラルゲイル・サイバーナチュラルブラスト
ゴーセン:テックガット5300
ミズノ:マルチファイバーフォース

 

(お客さま)
マルチフィラメント、私には良さそうですね

 

(私)
メインストリングス(縦糸)クロスストリングス(横糸)
種類を変えたものがハイブリッドです。

ガットは、
縦糸は飛距離やドライブ性、横糸は打球感をつかさどっています。
このガットは、縦糸と横糸の素材や、種類を変えてガットの特性の良いとこ取りができるということで最近人気があります。
例えば、切れやすい縦糸はポリエステル、横糸は、ホールド感のあるマルチフィラメントにすることで軟らかい打球感と耐久性を両立させるということができるのです。
市販のハイブリッドも多数ありますが、お客さまが自分好みに組み合わせる人もいます。
ただし、ストリングの特性の知識は必要となります。

 

(お客さま)
進歩していますね!
これも、昔はありませんでした。

ゴーセン:ゼノブリザード・ブルズインパクト・X5S
ヨネックス:デュオラッシュ
ほか

 

(私)
3:太さ(ゲージ)もガットの性能に大きく影響します。
現在発売されるソフトテニスガットの太さは直径.1,20mm~1.38mmの幅があります
細いと反発性が増し、スピン(回転)がかかりやすくなり
太いとホールド感が増し耐久性もアップします

太めのガット

ゴーセン:
テックガット52001.38mm
ハイシープミクロ(1.35mm
テックガット53001.32mm
SGコントロール1301.30mm

やや細いガット

ゴーセン:
ガムゾーン(1.27mm
ガムブースト(1.25mm

ヨネックス:

 

(お客様)
また、鯨筋の話になりますが、鯨筋の太さやクオリティーは、まちまちだったので売り場で一本一本比べて選んでいました。(笑)


(私)
次は、鯨筋時代にはなかった要素

4:コーティング
ガットの表面を覆う薄膜のことで、つまりお化粧です。
そのコーティングを施すことでボールが食いつかせたり、すべらせたりさせて
性能や、耐久性などを補ったりします。
例えば、
ゴーセンのガムゾーン・ガムブースト
ヨネックスのS-ファング
ミズノのマルチフォースなどは
粘着性のコーティングで、ボールとの摩擦を高くしてドライブ性能の向上をはかっています


(お客様)
確かに、人間もお化粧すると、びっくりするくらい変わる人いますね(笑)


(私)
ガットの特性、性格は、ここまでお話した
素材、構造、太さ、コーティング
この組み合わせで決まります  


(お客様) 
なるほど

 

(私)
テニスは、野球やゴルフと違い「飛べばいい」のではなくて、ネットを越してコードに収まらなければなりません。
初心者のうちは、力加減もわからないので、ガットやラケットの違いはわからないですが、実力がついてくると、プレーヤーのパワー、テクニックとラケットの性能を活かすも殺すもガット次第ということになってきます。

なので、ガット選びは重要ですが、初心者や中級者のうちはポリエステルやハイブリッドなど個性の強いガットを選んだり、トップ選手が使用しているからと真似たりしないで、ベーシックなモノフィラメントを張り、テンションや定期的な張替えに意識をすることが大事です。
全国大会常連の中学校は、試験休み中に部員全員の張替えをまとめて当店に送って来ますが、ほとんどが、ベーシックなガットでテンションも25ポンド前後です。

5:テンション
さて、これも、ラケットとプレーヤーとの相性をいかすための大切な要素です。


(お客様)
私の時代、上級者は自分で張っていました。
私もヨネックスのガット張りキットを持っていました。
ラケットのグリップのような巻棒と目打ちとニッパが入っていました。


(私)
ニッパがない人は爪切りで代用していましたね。(笑)


(お客様)
その時はテンションなんて言葉はなかったです。強いか普通か弱いの3つだけ(笑)
でも、私はナロさんで初めて機械張りを経験しました。


(私)
はい、おそらく、他のショップでは、硬式テニスラケットは機械張りで、軟式テニスラケットは手張りをしてましたが、当店は創業時(1986年)から機械張りを提唱していました。
おそらく、軟式テニスラケットを機械張りしたのは、当店が最初だと思います



これが、スポーツナロ オープン時の広告で
この中に
このように、機械張りを、お店の「ウリ」としていました。

 

(お客様)
私もナロさんで初めて、機械で張りました。
硬く張ったのにフレームの形がそのままだったことに、驚いた記憶があります。

 

(私)
そうですね。カーボン素材になって、ボールの飛距離が出てしまうので、硬く張ることが求められて、それが手張りだと、どうしても変形してしまうということで、次第に機械張りをする店が増えていったようです。

 

(お客さま)
では、テンションでどのように変わるのですか

 

(私)
簡単に言うと低いテンションは飛んで、高いテンションは飛ばなくなります。
なので、
スイングスピードの速いプレーヤー硬く
スイングスピードの緩やかなプレーヤーは、軟らかくが基本です。

ちなみに、その目安は
男性は
パワーがある  26~32ポンド    
パワー普通   24~28ポンド
パワーがない  22~26ポンド
ジュニア(高学年) 18~22ポンド

女性は
パワーがある 25~27ポンド
パワー普通 23~26ポンド
パワーない 22~24ポンド
ジュニア(高学年) 18~22ポンド

といったところでしょうか。
もちろん、体格や、レベル、経験年数によって違ってきます。

(お客さま)
ちなみに私は、何ポンドぐらいが良さそうですか?


(私)
そうですね、当店では、いま、男性で最も多いのが28ポンドなので、そのぐらいでいいと思います。

そして、もう一つ、ガット張りで付け加えると、張り方がいくつかあり、大きく分けると、ガットを切らずに縦から横まで1本のガットで張る1本張りと1本のガットを縦と横に分けて、それぞれ独立して張る2本張り。

そして1本張りでも、張りあげる順番やパターンによってゴーセン張り、ミズノの勝ち張り、当店のナロ張りなどがあって2本張りにも、ヨネックスのS張りとV張りなど、多くのバリエーションがあります


(お客様)
張り方そんなにあるのですね。
どんな違いがあるのですか?


(私)
1本張りは、結び目が2つに減ることで、端の緩みにくくなるという効果があります。ただし安価なマシンやキャリアの浅いアマチュアが張るとラケットが変形する可能性があります。
2本張りは、横を張るスタート位置と張る方向、順番を変えることで、スィートスポットの位置を若干ずらす効果があると言われます。例えばヨネックスのS張りは、スポットが少し上でV張りは少し下になると、ヨネックスさんはアピールしています。


(お客様)
ラケット、ガットの歴史と今
とても勉強になりました。

では、ナロさんオススメのこのラケットとこのガットを28ポンドで張ってください。


(私)
ありがとうございます。
では、1時間ほどお待ち下さい。


(お客様)
え!今日いただけるのですか?

 

(私)
はい、当店には、ご遠方からわざわざガット張替えだけにいらっしゃるお客さまが多いので、ガット張りを最優先してなるべく即張り(すぐ張ること)をしています。
なので、最短は15分です(笑)
お電話で来店時間を行っていただければ予約もできます。

 

(お客様)
ガット張替えは、どのタイミングですればいいでしょうか?

 

(私)
一般的には、3ヶ月に一度(年4回)と言われていますが、私は、少し考え方は違います。
基本的には、使用頻度と気温の変化によってガットはボールが当たるにごとに、伸び縮みを繰り返しています。その回数が多ければ、当然のことながら、劣化が進みます。
また、気温が高いと「飛び」低いと「飛ばなく」なります。
こんな経験があります。年末に、寒い日本から暑いインドにレッスンで出かけたのですが、その時、現地の子どもたちと乱打したとき、いつもより飛びすぎたのです。なぜかというと、日本の気温が10度以下一方インドは30度超え、多分、ガットが高い気温でやや延びて、面圧(打球面の硬さ)が落ちたからでしょうね。音でいうと「パーン」から「ボーン」に変化しました。

 

(お客様)
面白いエピソードですね

 

(私)
結論をいうと、いつも通り打っていて「飛ぶ」「飛ばない」と感じた時、または、感じる前が張替えるのです。
初心者や、シニアの方などは、強い打球を打つことがなく、ガットの劣化はさほどしないので「暖かくなる前」(3.4.5月)「寒くなる前」(11.12月)の年2回でOK。

そして、通常のプレーヤーは、「暖かくなる前」「暑くなる前」「涼しくなる前」「寒くなる前」の年4回

更に、全国大会など、高いステージでプレーしている選手は、年4回に加えて、飛距離の変化を感じた時と大会直前に複数回。が目安です。

かつて、「ガットは張りたてより、少し時間が経った頃がいい」と言われていましたが、その「少し」という時間はどの程度なのかとても曖昧です。高いステージでプレーしている人は「張りたて」がベストなテンションとして、大会直前に張り替えることをオススメします。

 

(お客様)
確かに、私の学生時代は、張りたては硬いから少し緩んだほうがいい。なんて思っていて試合前に、ガットを踏んでた人もいました。(笑)

ガットのこといろいろと勉強になりました。
私にはどのガットがあいそうでしょうか。

 

(私)
そうですね、久しぶりのプレーなので、まずはあまりクセのないほうがいいです。
1,25mm1,30mm のモノフィラメントで27ポンド
ナロ張りでいきましょう。

 

(お客様)
ナロさんにお任せします!

 

ガット

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